くらしのちえ

良いものは作り手の知恵が詰まっています。選んだもので暮らしはつくられます。そんな暮らしの一部を紹介します。

誰からも頼まれ『「ない仕事」の作り方』

誰かから依頼を受けた仕事ではない。その仕事ははじめて見たときにはとてもつまらないものとしか受け取れないものである。それでも、そこからブームを築き上げる方法がある。

 

『「ない仕事」の作り方』という本で、みうらじゅんさんがやってきた方法論が丁寧に解説されています。本書では、みうらじゅんさんが提案してきた「マイブーム」という考え方から発展して、いかに注目されていなかった切り口を見つけ、世の中でうねりとなるブームを作っていくかが書かれています。

「ない仕事」の作り方

「ない仕事」の作り方

 

 

誰も頼もうとは思わない仕事にこそチャンスあり

誰も頼もうとは思わない仕事こそ、ブームになるきっかけが隠れています。最初は怪訝に思われたり、嫌がられたり、起こられたりするようなことに着目して掘り下げていくと、凄くヒットすることがあります。

 

本書では「ゆるキャラ」を主軸にその方法論が展開されています。昨今の「ゆるキャラ」ブームが形成されるまでにみうらさんが何をしたのでしょうか。

 

最初のきっかけは、本書(2015年)の出版される20年ほど前から全国各地の物産館イベントに足を運ぶと、妙な「着ぐるみ」が必ずいることに気づいたことから始まりました。無理のあるフォルムで、誰も知らないキャラクターなので、ひっそりと誰からも注目されずにいる佇まいに哀愁を感じたそうです。郷土の名産をこれでもかと、キャラクターのデザインに盛り込んでいく形に郷土LOVEを感じたみうらさんは、気づけば四六時中、郷土のマスコットについて考える様になりました。

 

「物産館のイベントに行くと、かならずいる変なキャラクターについて調べて記事にしてください」

 

こんな風に誰も仕事を頼んでくれる人はいません。だって、誰も注目していないものを記事にしたって誰も読んでくれないからです。しかし、そういうものにこそ、大きなブームのきっかけとなるネタが隠れているのです。

 

2つの単語の組み合わせでネーミング

さて、このように最初のきっかけを掴んでからの行動がとても興味深いです。

 

まだ誰も注目していないからこそ、名前はありません。名称もジャンルもないので、名前をつけることから始めるのです。興味の内容を純化させて、たった一言で言い表すと何になるかを考えるとのこと。ネーミングには、みうらさんの独自の方法論があるそうです。

 

それは、まず、対象を2つの言葉で考えます。そして、A+B=ABとなる名前の付け方ではなく、A+B=Cとなるように、Aか、Bかをどちらかがもう一方を打ち消すようなネガティブなものにしていくそうです。「キャラクター」であれば、それを打ち消す、「ゆるい」をかけ合わせる。「ちゃんとした」「キャラクター」ではなく、「ゆるい」「キャラクター」なので「ゆるキャラ」と名付ける。それによって「ゆるキャラ」という新しいジャンルの言葉が生まれるとのこと。ネーミングは付ける人のセンスによるので、みうらさんのやり方が全てではないと思いますが、参考になります。

 

さてネーミングをつけたら、その対象が明確になります。その後何をするのでしょうか。

 

無駄な努力を積み重ねる

そこから、やるべきことは、無駄な努力を積み重ねることだと、みうらさんはいいます。みうらさんの風貌をみると努力とは無縁の世界で生きている天才肌の人だと思えてしまいます。しかし、そこには、涙ぐましい努力があるとのこと。

 

まず、興味の対象となるものを、大量に集めるそうです。「好きだから買う、集めるのではない。買って集めて量が集まることで好きになる」という順番だそうです。「好きだから集める」という順番だと、どこかで好きでなくなったから集めないという事になりえます。自分だけの満足感であれば、ある程度の数を見て集めれば、自分のなかで飽きてくる瞬間があるからです。

 

また、収集の途中で心折れる出来事もあります。「今日のイベントで、着ぐるみは何時にどこで出ますか」なんて電話を自治体にかけると、たらい回しにされた挙句電話を切られてしまう事もあったそうです。誰も注目されていない中で着ぐるみのことを聞かれたら自治体の人も「ヤバイ人からの電話だ」と思うのは間違いないでしょう。それでも心折れずにとにかく集めるという、無駄な努力をすることで、「自分がそれを好きだ」と思い込ませる自分洗脳ができるのだそうです。

 

発表を仕掛ける

このように、誰もが興味を持っていなかった対象に対して、名前をつけ、大量の事例を収集することで、おそらく世界で最もその対象について詳しい第一人者になれることでしょう。ただし、そのことをうちに秘めているだけでは、ただのコレククターです。外の世界に発表することで、世の中のうねりになるブームとなるのです。

 

誰も興味を持っていないので「いま、自治体のマスコットが面白いので、取材してください」などといわれることは絶対ありえません。そんなところからスタートするので、自分で仕掛けていかないといけないのです。

 

みうらさんは、雑誌、テレビ、イベントなど大々的に仕掛けられる実績を積み重ねているのにもかかわらず、「一人電通」(博報堂の人と仕事をするときは一人博報堂というネーミングにするそうです。)というほどの、仕掛けをするそうです。

 

様々なメディアに企画書をもっていって、仕事をお願いする。小さな仕事でもうけるのだそう。そして、ただ企画書を持っていっても、はねられるので、編集者やプロデューサーへの接待も自分でするのだそうです。飲んで気持ちよくなってきたときに、プレゼンをして企画をなんとか通させるのです。

 

企画を立てるのも、材料を集めるのも、発表の場所や方法を考えるのも、接待をするのも、全部自分でやる。したがって、一人電通の状態。だって、誰からも頼まれることは絶対ありえない仕事だからです。

 

でもこんな風に仕掛けていけば、「なんだか面白そうだ」と思う人が出てきて、いろいろな人から仕事を頼まれる事が増えてくるそうです。そして、「誤解」する人が増えてきたときに大きなブームになるとのこと。すなわち、「ゆるキャラよく見かけるが、言い得て妙だ。独自の日本文化に光を当てている」など、深読みをして、語りだす人が増えだすときに、世の中のうねるを生み出すブームになるのだそうです。

 

それを好きだと思い込ませる努力

ブームは自然になるのではなく、こんな風に仕掛けることができるのかと感じました。みうらさんといえば、ちょっと変わったものを「好きだから収集して」それがある種のトレンドになるきっかけを作る天才肌のひとだと思っていました。なんで、あんなに変わった切り口で好きなものをたくさん集められるのか、不思議でたまりませんでした。天才は興味をもつものも違うなと、自分と違う人と考えていたのです。

 

しかし、それは誤解でした。たしかに好きだけど、好きだけだと挫折する。そこは私達と一緒だと。だから「収集して、量を積み重ねる」ことで、「自分がそれを好きだ」と思い込ませる涙ぐましい努力のうえで、それを発表することを主体的に仕掛けていたということを本書で知りました。このやり方は、みうらさんとは置かれている環境は違えど、参考になる部分も大いにあるかもなと思いました。

 

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