原研哉さんの『デザインのデザイン』。この本では、原さんのデザインに対する考え方が、これまでなされてきた仕事とともに紹介されています。デザインについてよく知らないという人でも、一読するとデザインに興味を持ってしまうようなパワーを持っています。
デザインとアートの違い
デザインとアートの違いについて明確に答えれますか?なんとなくわかっているようで、説明せよといわれたら難しいその両者の違い。本書では、デザインとアートの違いについて、「どのような動機で仕事が始まるか」の違いであると指摘しています。
すなわち、アートは「個人が社会に向き合う個人的な意思表明であって、その発生の根源はとても個的なもの」である。一方、デザインとは「基本的には個人の自己表出が動機ではなく、その発端は社会の側にある」としています。
この動機の違いによって、つくり手でない第三者の付き合い方が変わってくるのです。
アートは、個人のうちのなかに発想の根源があって、そこがアートの孤高でカッコいいところだといいます。アーティストではない第三者は、それを面白く解釈し、鑑賞する、批評するなどをしてアートと付き合います。
しかし、デザインは社会のなかにある問題を発見して、それを解決するプロセスだといいます。だから、デザインの計画や狙いは社会に生きる誰もが本質的には理解出来、デザイナーと同じ視点でデザインとしての問題解決をたどることができるのです。
トイレットペーパーをリ・デザインすると
本書では、原研哉さんが制作した様々なものが紹介されているのですが、印象的なものとしては「リ・デザインー日常の二一世紀」という展示会での作品です。
この展示会では、日用品を再びデザインするということで様々なクリエイターにお題を投げかけて、今まで普通に使われていたものをデザインしなおしてもらおうという企画です。
例えば、建築家の坂茂さんに依頼したテーマは「トイレットペーパー」。日常使うトイレットペーパーを、再びデザインしてくださいといわれたら、あなたならどのようなものを提出しますか。考えてみるととても面白い問いだと思います。
坂茂さんの出した答えは「中央の芯を四角くする」というものです。是非実物をみても見てください。
’00 竹尾ペーパーショウ2000 「RE DESIGN」展 | SELECTION | 日本デザインセンター
四角い芯にする、その心はなにか?
省資源のためなのです。
四角い芯にすると、紙を巻くと必然的に四角いトイレットペーパーが出来上がります。四角いトイレットペーパーは、いきよいよく回転しません。紙を取り出すときに引っ掛かりができます。引っかかりがあるので、人間は必要以上に紙を使わないようになるのです。また、四角いので物流上も便利です。ストックしたときに空間が生まれにくく、トラック等で運搬するときにもたくさん詰めるのです。
ただ、芯を○から□にしただけで、「省資源」という変化を生み出したのです。この事例から、デザインの面白さに引き付けられました。
これ以外にも、魅力的なデザインが紹介されています。そして、更に面白かったのは、原研哉さんが、どのように「デザインをデザイン」しているのかという背景が知れることです。例えば、「リ・デザイン」という展示会の生み出した背景、考え方、誰にどんなお題を出したかなど、思考過程に辿れるのも本書の魅力かと思います。単に1つのソリューションにふれるのではなく、どのような過程でその考えに至ったかということも知れるので、じっくり読んで折を見て見返すと新たな発見がある本です。
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