このところ、骨董に興味を持っています。
骨董には、器、宗教美術、家具、絵画、書画など様々なジャンルがあり、歴史、文化が関わる小難しい趣味だなと思っていました。
しかし、これまで興味がなかったからこそ、最近では新しい興味深いことが目白押しの分野で奥の深さを感じるばかり。
その楽しさの一端を文章にしてみたいと思います。
ものをみる楽しさの本質
骨董の楽しさは人によって様々だと思います。色々な楽しさがあって良いものだとも思います。今回紹介するのは、「くらしのちえ」 的な楽しみ方で、あくまで一例です。
私は「おもしろがる能力を伸ばしてくれること」に骨董の醍醐味があると感じています。例を挙げてご説明します。
ここに、一つの皿があります。
皿を見ておもしろがってくださいと言われて、瞬時におもしろがれる人はそんなにいないのではと思います。そのものの形だけ見て興味を持てと言われてても、おもしろがる力がないと「これは皿だな」以上に関心が持てないのです。
おもしろがるには、そのものの作られた現場を知ることが一つです。皿を見たとき、これは小鹿田焼きという大分県日田市で作られていて、刷毛を使って模様をつける小鹿田焼き刷毛目小皿だという情報と結びつけることで、少しだけおもしろがることができます。これは骨董でなくても、ある程度こだわって作った現代の工芸品であれば、産地のことに思いを馳せ、おもしろがることができます。
あるいは、その形、デザインをおもしろがることもできます。食器ならば、この形はこんな料理に合うなあ。この色とこの料理は逆にあまり合わないな。この仏像の顔がなんだか味があるなあと。そのものの造形をよく見ることでもおもしろがることができます。
骨董がもつ時代の面白さ
骨董では、古い時代のものなので、より深くおもしろがることが可能です。時間軸が加わることでそのものを見る視野を広げることができるからです。
この茶碗を見てください。
この茶碗は古伊万里の茶碗で江戸時代(延宝から元禄期、約1670年頃)に作られたものです。縁のところに鉄釉が塗ってあるだけのシンプルな白磁茶碗です。この白の美しさは濁手と呼ばれるもので、古伊万里の有名な柿右衛門様式だといわれています。このようなシンプルな白磁は比較的裕福な人が使っていたそうです。
これだけ時代があるのものなので、誰がどんな用途で使っていたのだろうということを想像したくなります。そうすると、その当時の生活について知りたいなという気持ちも湧きますので、当時の食事の風景などにも興味をもつことができます。そうして、その食卓の場面を調べて想像できるようになると、この茶碗から創造力豊かなおもしろがりかたができるようになるのです。
ニセモノがあることも面白さのポイント
さらに骨董ならではのおもしろがりポイントは、ニセモノも結構多いということです。ニセモノがあるので、人から言われたことが本当かどうか疑いながら、自分で調べ考えるという作業もできるのです。コレは本物かニセモノか不安になりながら買うものは他にはないと思います。バックや貴金属などは多少はその不安がありますが、それでもきちんとしたお店で買えば、ニセモノということはありません。しかし、骨董はどんなにきちんとしたお店で買っても、それが高額のものであっても、少なからず紛れ込んでしまうものなのです。
これは、人によっては面倒だという人もいるかも知れませんが、ニセモノがあることも骨董ならではの醍醐味です。現代の工芸品では、ニセモノかどうかを疑うという行為は生まれないですし、ニセモノがあるからこそ、本物が輝いて見えるというおもしろがり方もできるのです。
ここからは実際に辿ったことをお伝えしましょう。いちごの乗った先程の茶碗のお話です。
この茶碗は本物かと思ったとき、すでに美術館等で同じものがないかを調べる事になります。あるいは、古伊万里について、網羅的に調べたデータベースとなるようなものがないかということを調べだします。
そうすると、佐賀県立九州陶磁文化館では、古伊万里を網羅的に集めた「柴田コレクション」というものがあり、書籍も出ていることがわかりました。
このサイトには、柴田コレクション総目録があると載っています。値段は4000円で、1万点の古伊万里が掲載されているとのこと。コレはいいと思い、購入するわけです。なかなか直接行けないので、電話で郵送してもらう依頼をしました。
届いたものがこれ。
立派な図録です。4000円でこんな立派なものを販売しているのはすごいなあと思いながら、この図録をパラパラ読むと似たような茶碗が載っていることを見つけます。しかし、よく見ると、この茶碗より、サイズが小さいので、もしかしたらニセモノかもと思うわけです。結局いまのところ、この茶碗に関しては本物、ニセモノか判別できていません。
ちなみに、この「柴田コレクション 」は、経営者である柴田夫妻が 涙ぐましい努力の上に網羅したコレクションだそうです。この柴田夫妻のストーリーを知ることもできて、こんな素晴らしい人もいるのだなあとおもしろがれるのです。
柴田さんはすでに亡くなられているのですが、たくさん古伊万里を買いすぎで、自分の生活のものは100均ですますとか、佐賀出身でないのにたくさん集めているとか、おもしろい生き様を知ることも出来ました。
ここまでいろいろと深い知識をつけて、おもしろがれたので、ニセモノでも本物でもどちらでもいいものと思っています。
骨董について知りたい人
そんな骨董は最初の入口がやはり難しいと思うと思います。そんな人は、こちらのサイトがオススメです。
愛知共済のサイトなのですが、骨董について文化講座が非常に面白くまたわかりやすく紹介されています。細矢さんという骨董の学校を主催している方の文章で様々な観点から書かれていて、みていて飽きません。こういう情報を載せている愛知共済、大変素晴らしいです。
あるいは、骨董がどのように見つけられ、売買されいているのか、骨董屋さんの視点が書かれたこの本は特にオススメ。
主にアジアの陶器や古美術品を見つけ売買されている島津さんの本。

魔境アジアお宝探索記 骨董ハンター命がけの買い付け旅 (講談社+α文庫)
- 作者: 島津法樹
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2014/01/10
- メディア: Kindle版
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どストレートな骨董趣味の本ではないですが、骨董を通じた骨董商やアジアの堀師たちのスリリングな世界観が描かれていて、興味を持つきっかけになる本だと思います。
おもしろがるには能力がいる
さて今回は、骨董の楽しさについてまとめてみました。色々な楽しみがあるとは思うのですが、骨董を通じて「おもしろがる力がつく」ことが、自分にとってとてもいいことだと思います。古い汚い茶碗から、おもしろみを見出すこと、こんなことができれば、色々なことにおもしろがることが出来るのではと思います。こうしたおもしろがる能力をつけるには骨董は最適です。時代、作り方等さまざまな領域への興味が広がり、末永く楽しめる趣味なのだろうと感じています。
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