ワインと魚介類を食べ合わせるのが難しいというのは、科学的に証明されています。メルシャンの研究員の方が次のような研究を行っています。
こちらの研究を簡単にまとめると次のようなものになります。
ワインと魚介類の食べ合わせによる生臭さの発生に関する研究の概要
(1)ホタテの干物をワインと合わせると最も嫌な匂いが発生することを経験から気づく。ここから研究がスタートした。
(2)社内のプロ5~6名による官能試験をした。ホタテの干物との食べ合わせをすることで、ワインのどの成分が臭くなるのかを調べた。結果、ワインの中に含まれる鉄が原因だということがわかった。しかし、何故ワインに鉄が含まれると生臭くなるのかはまだわからなかった。
(3)そこで、鉄さびの研究をサーベイした。例えば鉄棒で鉄さびを触ると手が臭くなる。それは、人間の皮脂が鉄で酸化することで臭くなるということがわかった。すなわち、これと同じメカニズムで魚介類の脂質が鉄分と反応して臭いが発生するのである。
(4)ホタテとワインを食べ合わせることで発生する物質を特定した。『(E,Z)-2,4-ヘプタジエナール』である。ワインに含まれる二価鉄イオンが魚介類の脂質の酸化を促進し、生臭い成分を瞬時に発生させることがわかった。
(5)次にこのような成分の「生臭み」は「匂い」か、「味」かどちらが問題なのか?そこで、鼻クリップを使って、官能調査を実施した。そしたら、臭くなかった。すなわち、匂いの成分が口から鼻へ広がっているのである。
(6)では、西洋人はなぜ魚介料理とワインを食べられる?オリーブオイルの添加によって生臭さが防げるからだ。
ワイン好きの人が感じる疑問を科学的に解きほぐしてくれるとても面白い研究だと思います。
ワインの鉄分が魚介類に含まれる脂質に反応して生臭さを発生させているとは。
日本酒の懐の広さも鉄分が影響!?
ワインに比べて日本酒の食べ合わせの懐はとても広いです。合わない料理を見つけるのが難しいぐらい、どんな料理にも合わせることができます。そして、魚介類との食べ合わせほど、美味しいものはありません。
この理由も鉄分が関係しているのかもしれません。
日本酒には鉄分が厳禁です。
第5巻 品質管理|日本酒図書館|菊正宗~生酛(生もと)で辛口はうまくなる。~
鉄分が含まれるとお酒が赤褐色になってしまうからです。ですので、昔から日本酒づくりには、鉄分のないお水が使われていました。現在でも日本酒づくりに使うお水に鉄分が含まれる場合はフィルターなどで完全に除去をしています。
日本酒には鉄分が含まれないので、魚介類との反応で生臭さが発生せず、食べ合わせでもおいしく食べられるのでしょう。
食の世界にも科学があり、その科学を知るとおいしく食べられると思うと、科学を知る楽しみがありますね。
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