よく行く天ぷら屋さんから面白い話を聞きました。「カルキスのにおい」という話です。
天ぷら屋さんは、その時期の新鮮な魚介類を市場から調達して、捌いて天ぷらにしてくれます。天ぷらの味は、ネタの鮮度、温度管理が重要なファクターなのですが、天ぷらを食べながら料理人さんとお話していると、市場から仕入れた新鮮な魚でも、安心して天ぷらには出来ないという話になりました。天ぷらネタとして有名なキスをさばいているときに、どうしても消毒臭のする個体が交じるそうです。これが、「カルキス(カルキ臭いキスの略)」です。カルキ臭のような、消毒臭のようなにおいのする個体が、多いときでは10匹に1匹ほども入っていて、これを間違って捌いて天ぷらにしてしまうと生のとき以上に臭いにおいを放って、食べた人はトラウマになるレベルだそうです。なので天ぷらネタを作る際、職人さんは変なにおいがしないか何度も確かめると言っていました。
キスの天ぷらは、あっさりとした繊細な白身が特徴なので、このカルキスが交じると天ぷら油自体も臭くなるんだとか。だから、必ずさばく前にエラからにおいをかぎ、ハラワタを出した後もにおいをかいで処理しているそうです。
このにおいは、調理の過程で消毒液が混じってしまったというわけではなく、新鮮な釣りたてのキスでも、発生すること。愛知県食品衛生検査所の食品相談事例でも、キスが消毒のにおいがするということが書かれています。
なぜ、カルキスが生じるかは、正確な原因は不明なのだとか。おそらく餌が原因とみられれています。ギボシムシというゴカイ類が消毒臭いにおいがするそうで、これを捕食したキスがとてもにおうのだろうといわれています。
キスの天ぷらが嫌いという人が案外いたりします。もし、変なケミカル臭がして嫌いになったというときには、運悪くカルキスに当たってしまったということが疑われます。こうならないためにも、料理人の正確なにおいチェックが必要なのです。これまで私は何度かキスを釣りに行って美味しく天ぷらで頂いていたので、運が良かったということなのでしょう。調べてみるとキス釣りを頻繁にする人には常識になっていたのだそうです。天ぷら屋さんの隠れた下処理の話を聞いて、世の中には知らないことはまだまだあるものだと感心しました。
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