くらしのちえ

良いものは作り手の知恵が詰まっています。選んだもので暮らしはつくられます。そんな暮らしの一部を紹介します。

ヤフオク骨董購入失敗入門

このところ、夜寝る前にヤフオクをチェックする。骨董で面白い出物がないか、見つけるためだ。

 

骨董は、古美術店や骨董屋といったお店で買おうと思っても、一堂に会する骨董市などでも、自分のほしいものが売っていないことのほうが多い。だから、わざわざ足を運んで、見つけるという楽しみがある。

 

しかし、わざわざ、足を運ばなくても、インターネット上で骨董の売買が繰り広げられている。業者だけが参加できる市とは違い、素人でもオークションに参加できる楽しみがある。

 

しかも、骨董というジャンルならではの味わいも体験できる。買い物にスキルが必要だということだ。というのも、骨董はニセモノが多い。写真ではいいなと思っても、届いてみると、こりゃダメだということは頻繁に起こる。もちろん、自己判断で買ったのだから、返品はできない。だからこそ、価格はお店で買うよりも安くなる場合が多い。ニセモノが時々混ざることで、買い物にも判断力が求められるのである。

 

先日、ある商品を買った。桃山期志野酒器である。形、色がとても好みであった。迷わず入札をして、最後に競り勝った。

 

が、手に届いてみて、桃山期のものにしては、あまりにも表面がきれい過ぎる。素人でも分かるぐらいだ。これは桃山期のものではなく、新品ではないか。そんな風に疑問を持って、オークションのページを眺めてみると、怪しい点がわかってくる。箱のサイズが、明らかに器のサイズよりも大きい。この器のためにしつらえたものではないことが冷静に見ると分かる。

 

この子は何物なんだろう?誰かが最近作った作家物か、現代の工芸品か何かなのかもしれない。ますますよく物を眺める。形、高台のつくり。幾つかの特徴を頭に記憶する。

そして、オークションページにある、幾つかのキーワードを拾って、画像検索を繰り返して、この形の名前を特定した。「志野四方猪口」という。そこから、更に画像検索、高台のつくりが近いものはないかチェックをする。そうすると、ある現代作家さんの個展の写真でまさにいま手にあるものに近いものが、ほんの小さな写真がある。ビンゴ!作家さんの名前までわかってしまった。

 

その作家さんの来歴を見る。波乱万丈の生き方をしてきた方なのだそうだ。その方の丹精込めた作品が個々にある。しかし、桃山時代のものとして売られて、私の手元に来た。私としては買い物に失敗したと言える。しかし、この子(器)にはなんにも悪くない。作った作家さんも悪くない。悪いのは、知っていて売った人と、知らずに買った私だ。無知ゆえに、私の手元に来たことを、むしろ謝りたいぐらいであったし、名前を偽って売られてきたかわいそうな器に愛おしさを抱くほどであった。

 

今では、この器をかなり愛用している。当初の購入目的から失敗したとはいえ、とても楽しい買い物後の体験であったと今では思えるのである。お小遣いで買える骨董で、こんなに語れるストーリーがうまれることが楽しかった。

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休日は、骨董 (祥伝社新書)

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