漫画が娯楽のためのメディアから、情報伝達するメディアとして機能しだしている。
漫画は、活字だけではなく、絵とともに、描写される。そのため、まだ、文字から概念的に再現される状況を読み解く能力の発達途中の子供のための娯楽であった。しかし、漫画が表現できるのは、娯楽だけではない。文字情報だけの本よりも手軽に、気軽に情報伝達できるツールでもある。漫画化することで、それまでユーザー層をより広く拾うことができるのである。
最近、文字で読む本を漫画化することで、成功したものは、例えば「君たちはどう生きるか」
「君たちはどう生きるか」は岩波文庫の名著である。しかし、一冊読み解くには、辛抱強さが求められる。 子供向けに書かれているので、大人にとっては充分読みやすいと思われるが、お硬い岩波文庫であることから、手に取る層は限られていたのであろう。特にスマホ化の時代には、我々は手軽に消費できる文章に慣らされすぎている。
或は、SCM分野(サプライチェーンマネジメント)で重要な理論であるTOC理論を説明する「ザ・ゴール」。経営書であるが、小説風に書かれた読みやすい本である。
- 作者: エリヤフ・ゴールドラット,三本木亮
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2001/05/18
- メディア: ペーパーバック
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しかし、約500ページもの厚さ、難しい経営書という印象が読者を狭めていた。
それが、漫画として「翻訳」すると、手軽に手にとることが出来る。「ザ・ゴール」を気になっていたが、読んでいなかったというビジネスマンは、新幹線に乗る前に買って、東京から大阪間で読むことが出来る。もちろん手軽であるがゆえに、情報伝達量は減る。しかし、重要なことは500ページかけて説明する必要ないのである。TOC理論の専門家になるわけではないので、大まかなロジックを知れれば良い、あるいは興味を持てば別の本できちんと勉強すればよいという使い方がしたいのである。
- 作者: エリヤフ・ゴールドラット/ジェフ・コックス,岸良裕司,蒼田山,青木健生
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2014/12/05
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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投資に関する常識を一般常識と対比させながら描写するインベスターzは、もととなる本の「翻訳」ではなく、書き下ろしである。
丹念に取材をして、投資家、ベンチャー起業家、経営史家、マクロ経済学者の常識が、いかに一般常識と異なるかを認識させる。ここに書いてある情報が真実だと読者に思わせる力もある描写である。投資に関する本は世の中に何万冊もあるが、ここまで情報浸透力のあるメディアはなかなかないだろう。特に頭の柔らかい子供への影響力は計り知れない。
漫画というメディアは
・手軽に読み通すことが出来るため、読者の間口を広げることができる
・情報伝達量は減るが、大まかなロジック、ストーリーを知るのに適している
・情報浸透力が高い。子供にまでリーチできるため、影響力は計り知れない
今後漫画家は絵を描くスキルやストーリーを作るスキル以外の
・もととなる本を忠実に「翻訳」して、漫画として表現できるスキル
・本当に重要なロジックやストーリーを紡ぎ出すスキル
・一般常識とは異なるある業界の常識を丹念に取材するスキル
が求められるようになっていく(既になっている)
今後、日本が切り開いてきた漫画というメディアが世界の出版産業・教育産業に本格的に浸透する時代がすぐそこに来ている。
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