学生時代に読んだ、『理科系の作文技術』を改めて読み直しました。
この本は、1981年に発売以降、販売部数を伸ばし続けています。2016年3月には80刷増刷され、100万部も売れたロングセラーの本です。中公新書では、野口悠紀雄さんの『「超」整理法』以来2冊目のミリオンセラーだそうです。
「理科系の作文技術」35年かけ100万部 80回増刷 :日本経済新聞
ブログを書くようになってから、わかりやすい文章を書きたいと思い、久しぶりに本書を開きました。初めて読んだ当時、「目標規定文」というキーワードに感心したのですが、改めて読み直して「目標規定文」が文章を書きやすく、わかりやすくするために必須だと感じました。そこで、今回、目標規定文について整理したいと思います。
「目標規定文」とは、本書の造語で、自分が何を目標としてその文章を書くか、そこで何を主張しようとするのかを検討して、それを一つの文にまとめたもののこと。「目標規定文」に沿って、文書全体を構成することで、書きやすく、わかりやすい文章になるのです。
目標規定文の設定とは結論を先に決めてから書くこと
主題が決めたのちに、「目標規定文」を書きます。本書では、以下のようなプロセスを経て、目標規定文が書かれることが例示されています。
「日本の春は寒くなりつつあるか」という課題のレポートに対し、まず、気象データを60年分調査し、ここ10年の春の気象データと比較するという調査を行います。 調査の結果、年ごとに大幅な変動があるものの、「平均的にみると、ここ10年間は、春先に暖かくなりはじめる時期がおそく、また、春の平均気温も低い」という結論に達しました。そこで、レポートにまとめる段階にはいります。ですが、本文を書きはじめる前に、自分が主張するつもりのことを目標規定文にまとめます。
この場合、目標規定文は
「このレポートでは、ランダムな変動を考慮に入れても、1970年代に入ってからは春が来るのおくれ、また春が寒くなりつつあることを示す」
となります。
すなわち、目標規定文を作るタイミングは、
(1)主題を決める
(2)主題について調べる
(3)結論を一文でまとめる←「目標規定文」を書く
というプロセスの最後の段階になります。
この目標規定文を書いた後に、文章全体を構成を考えるのです。
文章を書きはじめる前に調査や分析を進めて結論を出し、その結論に沿って全体を構成することで、読み手にとっては読みやすい文章となり、書き手にとっては書きやすい文章となるのです。
よくあるのは、結論が出ないまま、とにかく書いてしまえば、何か結論が出るだろうと思って書き始めてしまうこと。こうしてしまうと、書き始めの最初の文章は明確な結論がなく書いているので、後で紆余曲折を経て出した結論と齟齬が生じてしまうことがよくあります。こうした書き方について、著者の木下さんは以下のような辛辣な指摘をしています。
結論まで考えぬく前に報告や論文を書きはじめ、書きながら思い迷われたのでは、読まされる方も右往左往せざるをえない。迷惑千万である。
(『理科系の作文技術』p.24)
もちろん、先に書いた目標規定文が文書を書きながらどうしても修正しなければならなくなる場合もあるはずです。書くこととは考えることに他ならず、頭で考えていたときには見えなかった論理の穴が見えて来ることがあります。したがって、最初に書く目標規定文は「書き改める可能性のあるもの、筋の通った文章を書くための一応の目標」と考えるべきものとして扱うのが良いそうです。
もし、執筆の途中で目標を修正することになったら、本書では最初から書き改めることを勧めています。一度書いたものを捨てて、新しい文章を一から書きはじめるという作業は、なかなか勇気がいるものです。しかし、中途半端に前の文章を使うと読みにくいものとなってしまうので、切れ味の鋭い文章を書きたいときはこのように書き進めるのがいいと思います。
おまけ:主題(テーマ)の設定とブログのネタ探し
今回、「目標規定文」を整理しましたが、改めて『理科系の作文技術』を読んでみて、主題の設定とブログのネタ探しが共通して参考になると思いました。
主題「その文章で主に何を論じるか」の選定にあたっては、以下の点を考慮に入れることが述べられています。
・与えられた課題
・1文書1主題
・文章の長さの制限
・読者
・なまの情報を選ぶ
この中で、ブログを書くという作業において、誰かから「与えられた課題」というものは通常はありません。自分自身で、何を課題とするかは決めなければならないのです。その時の指針となるものとして、「なまの情報を選ぶ」という方針は参考になります。
できるかぎり、自分自身が直接にことに当たりものに当たって得た情報ーなまの情報ーまたそれについての自分自身の考えに重点をおくべきである。これらは、たとえ不備があり未熟・浅薄であったとしても、オリジナリティーという無比の強みを持っている。紙の上で得た知識ー他人の報告や論文を読んで得た情報ーは、筆者自身の深い考察によって、新しい生命を与えられないかぎり、いかに巧みにまとめてみたところで所詮は二番煎じであって、読者に「ウン」といわせることはできない。
(『理科系の作文技術』p.21-22)
どんなものでも書いていいという自由度がある文章において、「なまの情報」を選ぶからこそ情報発信する意味があります。「なまの情報」のなかから、主題を設定することで、未熟なものであっても価値があるという意見は、もっともだと感じました。
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