くらしのちえ

良いものは作り手の知恵が詰まっています。選んだもので暮らしはつくられます。そんな暮らしの一部を紹介します。

集中をいざなう空間「名曲喫茶ライオン」(東京都渋谷区)

深い深い集中の世界にいざなわれました。

渋谷にある「名曲喫茶ライオン」のご紹介です。

 

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名曲喫茶ライオンにたどり着くまで

たどり着くまでの街の風景はかなり変わっています。

渋谷駅から道玄坂を上がる途中の右手に、渋谷百軒店商店街があります。この中に、目的の「名曲喫茶ライオン」があるのです。

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このあたりのお店は入れ替わりがあるのですが、ちょっといかがわしい感じのお店は昔から変わらずこのあたりに残っています。初めて一人でうろうろするのはちょっと勇気がいるかもしれません。右の電信柱にライオンの看板が見えます。

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坂の途中には、喜楽があります。老舗のラーメンが美味しいお店。

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坂を上りきるとT字路があります。左手の道に入ると、行列。なんの行列でしょうか。

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 カレーのムルギーが行列していました。こちらのお店は、まさにヒマラヤのような山盛りのご飯で、インパクト抜群のカレーで有名です。1951年からこの地で営業しています。

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 さて、ムルギーの通りを曲がらずに直進して行くと緑色で「ライオン」と書かれた看板が見えてきました。右手の電信柱にもライオンの文字がありますね。

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つきました。ここが名曲喫茶ライオンです。

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創業1926年と書かれています。すなわち91年も営業しているということなのですね。

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「名曲喫茶ライオン」店内の空間について

店内は撮影禁止なので、文章でご紹介していきます。ホームページに店内写真があるので興味がある方はご覧ください。

 

古い古い教会が取り残されたような。そこで開かれたカフェは薄暗く、クラシックの音に集中する世界。

 

1階は教会の祭壇のような空間になっています。祭壇のような場所には、とてつもなく大きなスピーカーがおかれ、その方向に向いて皆が一様に座っています。

 

2階フロア

巨大な立体スピーカー、そこから大音量で流れるクラシック。スピーカーの中央にはベートーベンの立体像が顔を出しています。

光が入り込まないフロアでは青白い電灯をたよりに移動します。

2階に上がれば、太陽の光がガラス窓から小さく入り込んでいます。軽快な音楽の中、景色が変わるのが2階です。まるでこれから旅に出る列車のような。お客全体が乗客で、立体スピーカーに向かって皆同じ方向を向いて整然と座っています。

 

 

音楽でつながる世界

個々のテーブルには、それぞれ自分の時間が流れています。だれもそれを侵さない。でも、同じ建物で音楽を聴く。コーヒーを飲み、ふと顔を上げた瞬間。自分と同じ方向を向き、同じ音楽で繋がっている不思議さ。「音」でつながる異空間。

音楽のなか、誰もが主人公になれる場所。

音楽は誰のバックミュージックでもある。

・ふと入ってきた老夫婦のための音楽。

・熱心にしかし、ひっそりと話す恋人たちのための音楽。

・一人で黙々と原稿用紙に向かう男性のための音楽。

・腕を組み、帽子を深くかぶって居眠りをする若者のための音楽。

・煙草の煙を吐き、遠くを見つめる青年のための音楽。

どれもが正しい。

音楽を軸に、すべてをお客さんを主人公にしたストーリーに見立てられるのは大きく流れる音楽の力。

 

集中力をいざなう場所

渡されるパンフレットもレトロなデザイン。「珈琲と立体名曲」いいキャッチコピーだな。毎日15時と19時には定時コンサートと称して、このパンフレットに乗った曲が流れています。それ以外の時間はリクエスト曲が流れます。

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立体名曲が流れる中、集中して考えたり、書いたりできる場所です。集中に疲れたら、ちょっとお昼寝もできます。こんな空間なかなかないです。渋谷に立ち寄った際、ちょっと時間が空いたなという時に、チェーン店のコーヒーショップに行くのもいいけれど、名曲喫茶ライオンという選択肢を携えておくと、いい時間が過ごせることでしょう。コーヒー一杯550円で、この空間を堪能できます。

 

いつまでもこの地でこのような場所を続けて欲しいものです。でも、こういう素晴らしい雰囲気の歴史あるお店でも、下北沢にあった「ジャズ喫茶マサコ」のように再開発などでいつかなくなるかもしれない。いままだあるうちにまた何度もいきたい。ノートと鉛筆をもって。そんなふうに思わせるユニークな喫茶店。名曲喫茶ライオンのお話でした。

  

 

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