今回は、サンフランシスコで日本の日本料理にも負けない料理を出すお店Kusakabeを紹介します。お寿司を主体とした会席料理をいただけます、素晴らしいレストラン。そして今回こちらで試したのは、サケやワインとのペアリングです。和食に合うのは、日本酒か、ワインかどっちだったのでしょうか。
お店のシステム
お店は、おまかせ料理(Omakase)のみ。おまかせは2種類。Omakase($95)とGrand Omakase($150)です。違いは、料理とお寿司の品数です。
飲み物が面白いです。その時の料理にあったワインやお酒を出してくれるワインペアリング、サケペアリングがあります。このペアリングがとても良い。グラスや器もお酒や料理に合わせて出してくれて、なぜこの組み合わせを出してくれたのか想像しながら味わうと、楽しいのです。
今回は、二人で訪問したので、Omakase($95)に、ワインペアリング($120)、サケペアリング($120)を頼みました。さて、料理にあうのは、日本酒なのか、ワインなのかどちらでしょうか。楽しみです。
味わったもの
さてお店に入店です。お店は事前に予約をしました。5時と8時の2回転のみ。今回は8時から予約です。ギリギリの時間にお店につきました。
アメリカのお店は、インターネットで予約ができる場合が多いので、非常に簡単に予約が出来ます。日本も、電話ではなく、インターネットで予約できるようになれば、お客さんもお店の側も手間が省けるのにと思います。
店内は、カウンターとテーブル席があります。今回はテーブル席でした。もし行かれる場合は、カウンター席でと予約をする方が料理のライブ感を味わえて面白いと思います。それにしても、カウンターにいる料理人の数が多いですね。この写真だけでも7名がいらっしゃいます。
さて、まずはメニューを見て、お料理を注文します。今回は、Omakaseです。料理を注文する前に、一番出汁(Ichiban Dashi)が出てきます。鰹の旨味がすごく濃い。落ち着きます。周りのアメリカ人たちも同じように一番出汁を味わっていると思うと、何故かわかりませんが、日本人として誇らしい気分になりました。
さて、最初にでてきたのは、お寿司。先鮨(Sushi Prelude)と言うそうです。左から、中トロ漬け、活け締めヒラメと肝、カツオです。全てのお寿司に味はつけてあるので、お醤油は出てきません。
お米はカリフォルニア米ではないそうです。カリフォルニア米はややパサパサしているので、実は寿司にも合うのですが、今回のものは日本米に近いものだと思います。
お魚は、7割ほどは築地から入れているそうです。これは、以前、別のレストランで聞いたのですが、日本から入れる理由は締めの技術の差から。アメリカでも魚は同じものが取れるので、アメリカ産の魚を使った方が鮮度が良いのでは思ってしまうのですが、魚を収穫してからの、活け締め、氷じめ等手当のやり方が日本と違うとのこと。近場で採れたての魚でも、鮮度は締めの技術の差で築地からのものにはかなわないというのは面白いと思います。
合わせるワインはこちら。Brut Rose Billecart-Salmon Champagneというフランスのロゼシャンパンです。
一方サケペアリングは、出羽桜、雪漫々。ワイングラスで出てきました。5年熟成とありますが、氷点下での保存ゆえなのか、熟成感なく、フレッシュでありながら味わい深いものでした。ワインと日本酒どちらが、この寿司に合うかといえば、どちらも合う。今回は引き分け。寿司に、ロゼのシャンパンも悪くはないのです。
さてお次の料理はお造り(Sashimi)。マグロ、あん肝を巻いたタイです。つけるのは醤油、ゆずオニオンソースの2種類。
合わせるワインは、リースリングのこちら。
そして、日本酒は剣の大吟醸です。はじめてのみました。福島県会津市のお酒でメロンのようなフルーティなお酒でした。
さて、お造りは、2種類のソースがあります。醤油、柚子オニオンソースです。柚子オニオンソースにはごま油が入っています。
まずはマグロを醤油につけて食べます。そして、リースリングをのみます。醤油とマグロの鉄分が反応して、若干生臭さを感じました。剣は問題なく合いました。マグロと柚子オニオンソースとリースリングはバッチリ。また、たいとあん肝はリースリングでもマッチしています。剣は安定的にどの料理とも合います。
今回は、剣がベストマッチでした。リースリングは、シャキッとした酸味でとてもいいのですが、醤油だとマグロの鉄分と反応して、生臭さが出てしまいます。マグロの刺身には日本酒だと再確認しました。
お次は八寸(Hassun)。のれそれのおひたし、ホタルイカ、牛肉のコロッケ、スギの南蛮漬け、牡蠣(kumamoto)です。おいしそうな彩り。どれも日本で食べるクオリティと同じ。シアトルで取れたクマモト牡蠣が美味しかったです。
合わせるのは、こちらのワイン。
そして、お酒は麒麟山ブラウンボトルです。英語だと、Flying Dragonというネーミングだそうです。
今までは、ワイングラスで日本酒がサーブされましたが、今回はガラスのお猪口です。
今回の料理は、ワインと日本酒どちらも合う。共に甲乙つけがたいマッチングだと感じました。牡蠣は、ワインでもとてもマッチしております。
次のお料理は、椀物(Soup)です。すっぽんうまみ卵豆腐スープ(Suppon umami tamago tofu soup)というネーミング。豆腐と黄色の球状のものが見えますが、中になにが入っているのでしょうか。
合わせる日本酒はこちら。南部美人吟ぎんが(純米吟醸)。南部美人は英語ではSouthern Beautyというのですね。
こんなグラスで出てきました。
一方ワインはこちら。
どちらのワインもフルーティーな香り、甘さがあります。椀物にはスッポンのスープ、豆腐の中にカニの身が入っているようです。そして、黄色い球状のものは、銀杏かなと思って食べたものが、非常に旨味が濃くて、レバーのとろっとした舌触り。何なのかを聞くと、スッポンの卵だそうです。こんな味がするのですね。
今回は引き分け。どちらも同じくフルーティな味わいで、このお椀にとても合います。なるほど、フルーティーな日本酒はこう合わせるのか。フルーティーな日本酒は食前酒にはいいですが、食事には合わせづらいなと思っていたので、参考になりました。
さて、次はお寿司。彩鮨(Sushi Chic)というそうです。シマアジ、アーティックチャー(Artic Char:サーモンの1種です)、おぼろが乗った鯖。
合わせるのはシャブリ。
真澄の七號。
真澄はこのグラスで出てきます。日本で特注したグラスだそうです。うすはりのグラスですね。
シマアジ。これは、真澄七號が合います。七號の酸味と、シマアジの旨味。ベストマッチです、これは!
アーティックチャー。北極イワナと言われるもので、サケとマスの仲間だそうです。これは、脂が乗っていますね。
鯖。ちょっと甘めなおぼろがのせてあります。シャブリも意外にも合います。
今回ベストマッチは、真澄七號とシマアジ。シマアジと七號の酸味が一体となって、これはベストマッチでした。
さて、おまかせ最後の料理は、締鮨(Sushi Finale)。うにいくら、まぐろのすきみです。
合わせるワインは、なんと赤ワイン。カリフォルニアでとれたピノ・ノワールのCobb。赤ワインは、うにいくら、まぐろすきみというちょっと生臭そうなものにちゃんと合うのでしょうか。
日本酒はこちら。惣誉特別純米、栃木のお酒です。
お猪口で出ました。
うにといくらをピノ・ノワールで。大丈夫かなと心配しながら、うにいくらを食べ、ワインを一口飲む。おーー、これは!合いますよ、ピノ・ノワール。すごいな。なぜだろう。うにいくらがまず生臭くないからか。生臭さが気にならず、口の中でうにの旨味をワインがうまくまとめてくれます。うーん、これには驚きました。やられた。
まぐろのすきみ。これとピノ・ノワールで。こちらも悪くないです。
今回のお料理には、ワインがベストマッチ。といいますか、ワインでしか合わせませんでした。惣誉はもちろんこれらのお寿司にはあうでしょう。だめだろうと思っていた赤ワインがなんのなんの。 Cobbというピノ・ノワールのワインがとても合いました。うにいくら、まぐろすきみとどちらも濃厚なタイプなお寿司に非常に合いました。こういうのをマリアージュというのでしょうか。いやー、これは面白い。
ワインの意外さと日本酒の懐の深さ
さてさて、今回、ワインと日本酒のどっちが合うかという観点でKusakabeのお料理と飲みましたものを紹介しました。
今まで、「和食といえば日本酒でしょ」という価値観でいました。最近の日本料理でもワインを出すお店が増えています。でも、ほんとに合うかというのは疑心暗鬼でした。今回、サンフランシスコで出会ったKusakabeという日本料理のお店で「いやいや、ワインも案外いけるよ、しかも、うにいくらにピノ・ノワールも合うよー」ということを知らされて頭ガツンとされた気分です。
もちろん、ワインと合わせづらい料理もありました。マグロとリースリングはちょっと生臭さを感じました。ワインは料理を選ぶ必要がある一方で、日本酒はどの料理とも合っていて、日本酒の懐の広さを再確認出来ました。あと、お値段的にも日本では日本酒はとてもとても安い(海外では日本の2〜3倍の価格です)ので、これだけ恵まれた環境にいるのだからもっと日本酒を飲んだほうがいいなあとも感じました。
それにしても、海外の日本料理のレベルの高さ、日本の枠を飛び越えた創造力にビックリです。海外に出かけて、わざわざ日本料理を食べるのはどうかと思うところではあるかもしれません。しかし、舌の基準が日本で作られているものなので、日本の日本食との違いもわかり、きちんとその良し悪しが判断できるように思います。いいお店ではこれだけのクオリティと楽しさが味わえるとなれば、海外で日本料理を食べることも悪くはないなあと思います。
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