4月22日、23日は、京都ふるどうぐ市が開催されます。
目白コレクションに出店した、気鋭の骨董屋さんたちも出店するので、是非いってみたいなと思っています。
さて、この京都ふるどうぐ市の会場は「元・立誠小学校」で開催されるのです。この元・立誠小学校は改修工事が行われるので、この場所では最後の開催となるそうです。
元・立誠小学校は、1993年で閉校になったのですが、その雰囲気そのままに残されていて、これが建て替えのため、壊されるのはもったいないなあ。耐震化のためにも、必要なのかな、でも悲しいことだなあと感じたことが、この後の考察の発端になりました。
元立誠小学校跡地の活用について
ちょっと調べてみると、どうやら、元・立誠小学校は建物をそのまま残し、市が土地を貸すので活用事業者を募集していたことがわかりました。市としては、土地代から収入源になり、しかも、その地域の賑わいを促す事業が営まれれば一石二鳥ということなのでしょう。
京都市:元立誠小学校跡地活用に係るプロポーザルの実施について
さらに、このプロポーザルの計画をみると、どうやらもう事業者が決まっているスケジュールになっています。誰が事業者となり、そして、どんなプロジェクトを立ち上げるのだろうかと気になって調べてみました。13事業者が応募した中で、ヒューリック株式会社というディベロッパーが選定されていました。
京都市:元立誠小学校跡地活用に係る契約候補事業者の選定について
ヒューリック株式会社のPPP事業
ヒューリック株式会社は不動産の所有・賃貸・売買ならびに仲介業務を行う企業で、東証一部に上場しています。従業員数は単体で、149名、売り上げ2157億円。
今回、ヒューリックが元立誠小学校跡地を定期借地し、市の指定施設と民間提案施設を合わせて、建設運営するというPPP(パブリックプライベートパートナーシップ)事業で、ヒューリックにとって6件目の事業になるのだそうです。
200室の宿泊施設が事業の柱
ヒューリックが支払う貸付価格(年額)は2億3000万円。この金額は高いのか安いのか、土地勘がないのでわかりません。しかし、京都の一等地にあるので、おそらく、安い価格なのでしょう。
すくなくとも、年間2億3000万円のお金をはらってでも、成り立つ事業とはどんなものなのでしょうか。普通の商業施設でテナント費をもらうビジネスでは、この金額は回収できるでしょうが、利益としては微妙だろうとも感じました。どんな事業なら、この金額を払ってでも、利益を出せるのでしょうか。
詳しく調べてみると、宿泊施設が収益源になるようです。なるほど、ホテルか!京都のホテルは、なかなか取りづらくなっているもんなあ。
今回の事業では、立誠小学校の建物はそのまま残しながら、ヒューリックが宿泊施設を建設して、そのほかの市の指定施設を運営するんだそうです。
では、この宿泊施設で事業として収益が出せるのでしょうか。ちょっと計算してみました。
売り上げ
この事業の売上についてざっくりと計算してみましょう。
365日×1泊宿泊料×200室×稼働率=年間売上 ・・・(1)
となります。
ホテルのランクなどにより宿泊料は変化するのですが、ここでは、平均的な京都のホテルで事業を営んだとしてどれくらい売り上げられるかをみたいので、
・楽天トラベルで人気の京都ホテル5位の平均最低宿泊代 13314円
を用います。 *1
・稼働率 87.9%
を用います。*2
これを計算すると年間売り上げは、(1)より
8億5431万円 ・・・(あ)
と算出できます。
費用
ここでは、かかる費用として、(1)ホテル建設・運用費と、日々の宿泊オペレーションを回すための費用として(2)オペレーション費があるものとして、考えてみます。
ホテル建設・運用費
建設費を計算してみましょう。ざっくりと計算したいのですが、調べてみると国立国会図書館の方が、図書資料を元に計算したものがあります。このレファレンス資料すごいですね。既存の資料でこれだけ調べられるぞという、迫力を感じます。
延べ床面積は、15000平米ですので、上記の資料によると「地方中核都市に立地するシティホテル」規模に該当するとして、
(延床面積1万3,500㎡、客室規模180室、宿泊収容人数260人、レストラン・コーヒーラウンジ・バーをフル装備)の場合、建築工事費は2,193,750千円。初期投資にはこの他に設備工事費(1,181,250千円)、什器備品費(675,000千円)等が含まれ、初期投資総額は4,437,854千円となります。
とのこと、44億円としてみます。
今回のヒューリックの提案では貸付期間を60年としています。60年で建設費をペイしようとした場合、年間0.73億円の費用です。ただし、建築物全てにかかるライフサイクルコストは、この初期建設費用だけでなく、保守費、修繕費、保険など、様々見えないコストがかかるとのこと。30%ぐらいが建設費と言われているそうです。ここでは30%で計算してみましょう。
建設・運営費は年間で、
2.44億円・・・(い)
かかります。
オペレーション費
ホテルを運営していく場合には、受付、清掃等の人件費がかかります。そのほかにも、シーツ、タオル、歯ブラシ等の費用もかかるでしょう。また、電気、水道、通信等の費用もかかります。
日々のオペレーションをどれだけ見積もるかがやや難しいのですが、ここではどうでしょう、売り上げの10%と見積もってみましょう。そうすると、8543万円。うーん、この金額だと、人件費で10名雇えるかどうかですかね。10名で200室のホテルを運営できるのでしょうか。しかも、それ以外の費用が加味されていません。何人でオペレーションを回せるかちょっと土地勘がなさすぎてわかりませんので、とりあえず10名ほどの金額で、その他の費用として売り上げの10%加味して、合計売り上げの20%がオペレーション費とします。
1億7086万円・・・(う)
としてみます。
今後、オペレーション費の妥当性をもうちょっと考えてみたいところです。
利益
それでは、どのくらい利益が見込めるのでしょうか。(あ)〜(う)に、土地代2億3000万円を加えて計算したところ、
8.54億円 ー(2.3億円+2.44億円+1.7億円)= 2.1億円
となりました。
考察
今回、ざっくりと計算したところによると、元立誠小学校を宿泊施設として活用することで、年間で2.1億円の利益を生み出すことができるようです。
ただし、以下の要因を加味するともっと収益があげらそうだと思います。
・計算上京都の平均的な稼働率を用いましたが、これだけ良い場所にあるので、もっと稼働率は良くなると思います。
・京都のホテル需要をみると、非常に高い需要があるのにもかかわらずホテル側の供給が少ないという状況です。さらに様々な複合施設もある場所柄、高級感ある内装予定写真を元に考察すると、もっと高価格で宿泊費を取ることが可能だし、それを意図していると思います。新築ですので、数年間はそれも加味した価格で勝負できるでしょう。
・土地代は2億3000万円から、地元利用による減額があるそうです。図書館等の利用で土地代を減額するのでしょうか。
・商業施設からのテナント料、収益などは加味していないので、この分の売上も上がっていくと思います。ただ、図書館、自治会運営スペースなどの市の指定施設の運営もヒューリックが行うとすると、この費用分を加算しなければなりません。
計算上に用いた仮定は信頼性の低いので、この数字の妥当性は若干怪しいのですが、それでも、さまざまな追い風要因がありますので、収益を生み出すことができるビジネスなのは間違いなそうだと感じます。13事業者が入札に応募したのも頷けます。
今回、京都ふるどうぐ市から話を初めてみたのですが、会場である 元・立誠小学校へと興味の対象が移って、ホテル経営の話にまで考察を進めてみました。こんな計算を知った上で、今年最後の京都ふるどうぐ市の会場である元・立誠小学校に足を運んでみると、感慨深いかもですよ〜。
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*1:条件:(a)平日の最低宿泊費を算出(5月15日月曜もしくは16日火曜日の最低宿泊費)
(b)土日の最低宿泊費を算出(6月3日土曜日の最低宿泊費)
11112円(税抜)・・・平日価格
18820円(税抜)・・・休日価格
1週間のうち、5日を平日価格、2日を休日価格で販売するとした場合の平均最低宿泊代は
13314円(税抜)