電車内で大人でも考えさせられる入試問題を掲載している、日能研の額面広告。
今回見たのは、本当に今考えさせられる課題でした。
2017年9月は学習院女子中等科の社会の入試問題が取り上げられています。ですので、小学6年生が回答する入試になります。伊勢志摩サミットでオバマ元大統領のスピーチを取り上げたうえで、以下の質問を投げかけます。
「核なき世界を平和的に実現するためには、どのようにすればよいとあなたは考えますか。あなたのアイデアをひとつ取り上げなさい」
この課題は、今の北朝鮮問題を考えると本当に我々に突きつけられた世界規模での喫緊の社会課題です。電車でこの問題を見ながら、自分ならどのように回答するのか、この問題をどんなふうに子供に考えてもらったらいいか考えさせらました。
日能研の答え
まずは、日能研の回答をみてみましょう。
広島や長崎にいる被爆者の体験談を記録し、それを複数の言語に訳してインターネットで配信する
と言うものでした。
この回答を見ていかが思いますでしょうか。
これでは問題は解決しない
この回答をみたときにまず思ったのは、「これでは問題は解決しない」というものです。これまでも、広島、長崎にいる被爆者の体験談はずっと語り継がれていますし、インターネットで探せばいっぱい出てきます。仮に、今の北朝鮮の人たちがインターネットを通じて、情報を見られるようになったとしても、北朝鮮の核開発はやめさせることは難しいでしょう。
では、今回の回答は間違っていると言えるでしょうか。からなずしもそうとは言い切れないところもあります。
小学生の入試問題への回答としては”正しい”
小学生が足元でできることとすれば、これは素晴らしいことだと思います。アイデア自体にはそれほど価値がなくとも、実際に形にしてみるということができれば、価値があるものになりうるのです。また、小学生がここで書かれたアイデアを実行することで着目されることもあるでしょう。
また、入試問題という観点からも”正しい”ことではあると思います。「平和的解決」という質問に正面から答えているので、入試問題への回答としてはマルがもらえるものだと思います。
ですので、日能研の回答が間違っているとは言い切れません。
大人と子供の対話が必要
でも、日能研の問題をみて、入試問題の限界についても考えさせられました。核なき世界を実現するというのは、子供にとって一生付き合っていかないといけない社会問題です。
子供が持っている貴重な資源は時間です。 この時間を使えば、大人に出来ないことがたくさんできうるポテンシャルあるものです。どこに時間を振り分けるかを、子供のうちに決めることができれば理想的です。
足元で出来うる、インターネットでの情報発信という回答を入試問題で書いて終わりというのはもったいないと思ってしまいました。本気でこの問題に取り組んでほしい。それに興味をもつ子供が生まれてほしい。
その時、子供が考えたアイデアに対して、対話が必要だと思いました。そして、世界で活躍するポテンシャルをもつトレーニングをしてあげる場が必要だとも思いました。
世界で活躍するポテンシャルを持つ子供へのトレーニング
トレーニングはその子供の持っている興味やステージに応じて形にしていくものだと思います。
「インターネットで情報発信」というアイデアを出した子供に対して、では実際にやってみようかと促してみるということがひとつ。それで、広島の被爆者の方にインタビューに連れていき、ブログで形にしてみるまで、サポートしてあげることもできるでしょう。
また、「そのアイデアはすごくいいアイデアだと私たちは思うけれど、かりに北朝鮮の人たちに情報発信をした場合にそれで解決するだろうか」と問いかけてみる。情報発信だけでは難しいとしたら「他にどんなアイデアがある?」と投げかける。それで考えられる子供であれば、もっと考えてもらう。それでいっぱい考えたときに、「核を無効化する平和的にしか使えない機械を開発したら良いのではないか」というアイデアが出るとしたら、「それなら、大学でこういう分野なら今後それに近いことが学べるかもしれないね」というアイデアにつながります。子供の持っている貴重な資源である、将来への時間をどのように使うかを決めることができる瞬間になるでしょう。
このようなトレーニングができる場はどこにあるのでしょうか。入試の一回のための勉強ではなく、本質的なトレーニングが積める場所が必要なのだと思います。
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