くらしのちえ

良いものは作り手の知恵が詰まっています。選んだもので暮らしはつくられます。そんな暮らしの一部を紹介します。

中小企業大国の日本への提言『国運の分岐点』

久々に明快な主張で知的好奇心をくすぐられた本。

それが、『国運の分岐点』です。

デービッド・アトキンソン氏は小西美術工藝社の社長をされていますが、キャリアの大半をゴールドマンサックスのアナリストとして過ごされていて、経済分析のプロ。

 

アトキンソンさんからみて、いまの日本の社会保障が増え続ける一方で、人口現象が急速に進む日本で、今後他国の属国にならずに国際社会で一定の地位を保ち続けるには、中小企業改革しかないという結論に至ります。

 

中小企業改革とは、具体的には最低賃金の増加させること、それに伴って中小企業の生産性向上の支援、生産性向上がうまくできない企業の統廃合。これには、日本同友会や、商工会議所が強く反発しています。しかし、アトキンソンさんによれば、それでは、日本が沈没してしまうという全体最適の視点からも間違っているということをロジカルにわかりやすく説くのです。

 

日本は中小企業大国です。その歴史を紐解くと、中小企業基本法が中小企業でいることのインセンティブを規定し、中小企業の経営者を増やすことに寄与しました。当時は、人口増加の中で働き口を作り、総付加価値額の絶対量を増やす中小企業奨励策は効果的なものでした。

 

しかし、中小企業セクターの生産性が低いため、諸外国と生産性を比較すると日本全体の生産性は低くなっています。GDPは生産性×人口であり、人口減少化の日本では生産性を高めかれれば、GDPを維持できず、したがって、今受けられている社会保障の水準を維持できないことが見えています。

 

こうした実態に対して、日本のあるべき姿への処方箋を明快に示す本書は、中小企業経営者にとっては厳しい現実を今後受け入れざるを得ないということを予期させるものではあります。しかし、このような方向性に進むだろうと思わざるを得ない明快なロジックから、日本人として、考えるべきことが述べられているという納得感を持って一気に読ませてしまうという本でした。

 

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