くらしのちえ

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日本の食文化の多様性の光と影

日本食はすごい説はどこから来たのかを、様々な食にまつわる歴史的な出来事や政策から述べた本書『<メイド・イン・ジャパン>の食文化史』

 

和食がユネスコ無形文化遺産に登録されて、注目されいているということはよく聞く。海外からくる外国人は日本食というコンテンツの消費を楽しみに来日しているということも聞く。多様な食、そして伝統的な食が混在する日本の食文化、それがいつからか、素晴らしいものという評価になった。

本書は、そうした評価はある種の歴史的な出来事のよろめきの中で出てきた一つの言説に過ぎず、本当にすごいのかと問いかけてくる。

 

改めて考えると、日本の食は主に欧米から食様式を取り入れ、食材は世界中から輸入する。そうして、世界にも類を見ない多様な食が入り混じっている。グローバリゼーション、多文化共生が食においては徹底的に進んでいるのが日本である。それは海外の流行の食を取り入れ、日本の中でも流行を引き起こしながら多様なスタイルを飲み込んでいるのである。こうした食の消費スタイルを筆者は、ファッションフードという。

 

他方、その結果として食料自給率はとても低い。これが日本の安全保障上、問題となる。そのため日本政府の政策上、他国との関係性において、食からの影響は切っても来れない。

 

2005年に農林水産省は輸入が完全に停止した事態を想定する献立例を作成した。

 

朝:ご飯1杯、じゃがいもふかし芋2個、ぬか漬け1皿

昼:焼き芋2本、じゃがいもふかし芋1個、りんご4分の1個

夜:ご飯1杯、焼き芋1本、焼き魚1切れ

 

味噌汁は2日に1杯、牛乳は6日にコップ1杯、卵は一週間に1個、肉は9日に1回しか食べられない。

 

何という貧食。戦時中の食事のようである。

 

食料自給率の向上のために作られたものとのことだが、むしろ外交上、食を輸入することを他の様々な要求を差し置いてでも優先せざるを得ないことを如実に訴えてくるメニューである。

 

食料自給率の向上は外交上他国から供給を頼らざるを得ないため、他国側が交渉カードを持つようになる。資源のないこちら側は提供できる交渉カードは、お金とならざるを得ない。そのためには、輸出できる力のある商品を持たねばならない。

 

食文化の多様性という光の部分が着目しだした日本の食だが、歴史的な経緯は誇るようなものではなく、他国との関係性、とりわけ戦争により影響を受け、ファッションのように海外の食を取り込んできた結果なのだ。

 

〈メイド・イン・ジャパン〉の食文化史

〈メイド・イン・ジャパン〉の食文化史

 

 


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